動物愛護法改正案が発表されました
2012.08.27 21:41|動物愛護法|
先週、動物愛護法改正の与野党合意案が発表されました。
まだ仮決定ということで、これから少数会派などに通して最終的な合意、決定案となるようです。
今期の国会では震災関連や消費税の案件が立て込んでいて、
動物愛護法の成立はもしかして見送られるのでは、と心配していましたが取り越し苦労だったようです。
国会の閉会までには成立の見込みというニュースを聞いたとき、
大変な国会の中で議員さんたち、動物のこともちゃんと動いてくれていたのだなあと、少し涙ぐんでしまいました。
(当たり前と言えば当たり前ですが・・・)
改正案の正式な全文はまだ発表されていませんので、各方面での記事の寄せ集めから、
気になるところを抜粋して私なりに解釈したものを書きます。
(※法案は、まだ決定ではありません)
【犬猫の販売業について特に規制強化されます】
第一種動物取扱業者のうち犬猫等販売業者について以下の事項を義務づける
-----------------------------------------------------------------------
◆幼齢個体の安全管理、販売が困難となった犬猫等の扱いに関する
犬猫等健康安全の策定及び尊守(第10条第3項、第22条の2関係)
◆飼養または保管する犬猫等の適正飼育のための獣医師等との連携の確保(第22条の3関係)
◆販売が困難となった犬猫等の終生飼育の確保(第22条の4関係)
◆犬猫等の繁殖業者による出生後56日を経過しない犬猫の販売の為の引き渡し
(販売業者等に対するものも含む)展示販売の禁止(第22条の5関係)
なお「56日」について、施行後3年は「45日」と、
その後別に法律で定める日までの間は、「49日間」と読み替える(付則第7条関係)
◆犬・猫等を販売する際の現物確認・対面説明の義務づけ(第21条の4関係)
-----------------------------------------------------------------------
ペットショップなどで売れ残った犬猫の末路は考えたくもないような残酷なものですが、
終生飼養の確保を義務付けられることにより譲渡活動が進められると共に、
そもそも売れ残らないように調整しないといけなくなります。
今まで、産めよ増やせよ売れ残ったら捨てよ、だった犬猫販売業界も、
終生飼養の確保と週齢規制のダブルパンチで少しは自粛してくれるでしょうか。
また、現物確認・対面販売の義務づけにより、ネット販売は実質不可能になると思われます。
ただし、いずれも経過措置が認められるとのことで、しばらくは現在の惨状が続くものとみられます。
・蓄犬業者(ブリーダ)の実態
http://www.geocities.jp/klcrfamily/real_breader.htm
・浅口市 売れ残り純血種を遺棄 (命の重さ さん)
http://animalexp0711.blog135.fc2.com/blog-entry-196.html
週齢規制について詳しく解説します。
-----------------------------------------------------------------------
犬猫等の繁殖業者による出生後56日を経過しない犬猫の販売の為の引き渡し
(販売業者等に対するものも含む)展示販売の禁止
-----------------------------------------------------------------------
これは私たちが求めていた8週齢規制についての改正案ですが、
結局どういうことになったかと言うと、
産まれた子が8週齢になるまではブリーダーが飼養する、ということになりました。
「親から引き離さないで」と訴えていた啓発バナーの通り、
ブリーダーから販売業者への引き渡しが8週齢になるまでは禁止となりました!
と、ここだけ読むとぬか喜びしてしまいそうですが、
付則としてややこしい文章がついています。
-----------------------------------------------------------------------
なお「56日」について、施行後3年は「45日」と、
その後別に法律で定める日までの間は、「49日間」と読み替える
-----------------------------------------------------------------------
読み替える、って何だかよくわからないですが、
あと3年間は猶予期間として「45日齢を過ぎたら販売業者に引き渡しできる」ということです。
つまり、現状と何も変わらない状態が少なくとも3年は続くことになります。
そしてその猶予期間の間に科学的に検証を進め、
猶予期間の3年が過ぎた時点でデータが揃っていれば、あるいは8週齢について社会通念として広まっていれば、
ようやく8週齢規制が実現することになります。
この科学的データ集めは、環境省にちゃんと予算がつきます。
でも3年経った時点で準備がととのっていない場合どうなるか?と言うと、
8週齢規制にはまだ早い、ということでさらなる猶予期間がつき
「49日齢を過ぎたら販売業者に引き渡しできる」と段階的に日齢を長くしていくようです。
2013年に施行された場合のイメージを図にしてみました。
(図の使用フリーです。必要あればどんどん使ってください。)

ということで結局、すぐには8週齢規制は入らないんですね。
本則に「56日」と書いてあるのは、一種のはぐらかしのように思えてしまいますが、
これだけ物議をかもした8週齢規制ですから、妥協点を模索した結果こうなったものと思われます。
業界への配慮と思われる猶予期間の3年が悔しいですが、
あえてポジティブに受けとると、
2段階目の猶予期間に突入する前に8週齢規制を早期実現する可能性が残されています。
最短で3年です。
ただしヘタすれば5年、最悪はそれ以上?とも読み取れる文章なので要注意です。
ですので、これから3年間で、環境省のデータ集めが滞りなく進むよう
協力や働きかけをすると共にアンテナを張って監視する、
そして世間へ8週齢の常識を広めていくための啓発もしていかなければなりません。
【悪質な多頭飼育の現場にメスが入りやすく】
-----------------------------------------------------------------------
◆騒音または悪臭の発生等、勧告・命令の対象となる生活環境上の支障の
内容を明確化する(第25条第1項関係)
◆多頭飼育に起因する虐待の恐れのある事態を、勧告、命令の対象に追加する。
◆多頭飼育者に対する届出制度について、条例に基づき講じる事ができる
施策として明記する(第9条関係)
◆狂犬病予防法、種の保存等違反を第一動物取扱業に係る登録拒否及び
登録取消、事由に追加する(第12条第1項関係)
-----------------------------------------------------------------------
悪質ブリーダーや一般個人の多頭飼育については、これまで特化した取り締まり基準がなかったため
各地域でひどい状態の現場が数々発見されてきました。
岡山でも、多頭飼育崩壊の現場がかなりの数あると聞いています。
・岡山市 犬多頭飼育崩壊 (森の小径 さん)
http://morinokomi.exblog.jp/15353271/
・浅口市 悪質犬販売業者 全焼事件 (犬の里親探しブログ さん)
http://kapirusu.blog116.fc2.com/blog-entry-64.html
上のほうで書いた、売れ残り純血種遺棄事件と同一人物です。
一度逮捕されても名前を変えて営業を続けてたそうです。結果これ。取締りが甘い。
・倉敷市 猫多頭飼育虐待 (かめちゃんの日記 さん)
http://peare.exblog.jp/17702246/
・井原市 猫多頭飼育虐待 (ちゃんた&ゆかいな仲間たち ~わんにゃん組~ さん)
http://chanta39.blog134.fc2.com/category3-1.html
今回の改正を受けて、多頭飼育の届出制度を自治体ごとにきちんと条例化し、
違反者には徹底した取り締まりをしてくれることを切に願います。
【アニマルシェルターが動物取扱業に入り、届け出が必要になります】
-----------------------------------------------------------------------
◆第二種動物取扱業の設立(第24条の2~第24条の4関係)
飼養施設を設置して、動物の譲渡等を業として行うもの
(省令で定める数以上の動物を飼養する場合に限る。以下「第二種動物取扱」という。)
に対し、飼養施設を設置する場所ごとに、取り扱う動物の種類及び数、
飼養施設の構造及び規模、管理方法等について、都道府県知事への届け出を義務づける。
-----------------------------------------------------------------------
これにより私が活動に参加しているシェルターも届出が必要になります。
届出書類の作成が大変そうですね・・・
・NPO法人 犬猫愛護会 わんぱーく
http://ww41.tiki.ne.jp/~wan89/
【行政による犬猫の引き取りが拒否できるように!?】(第35条関係)
≪これ重要!≫
-----------------------------------------------------------------------
◆都道府県等が、犬又は猫の引き取りをその所有者から求められた場合に
その引き取りをできる事由(動物取扱業者からの引き取りを求められた場合等)を明記する
◆引き取った犬又は、猫の返還及び譲渡に関する努力義務規定を設ける
-----------------------------------------------------------------------
これについては生方幸夫議員のブログより抜粋したものを読んでいただくほうが早いと思います。
以下、要点を抜粋させていただきました。
~中略~ 殺処分ゼロという文言は無理でしたが、原則、殺処分をしてはいけないという文言を入れることに成功しました。以下がその法律案です。
第4章 第35条4「都道府県知事等は第一項本文の規定により引取りを行った犬又は猫について、殺処分がなくなることを目指して、所有者がいると推測されるものについてはその所有者を発見し、当該所有者に返還するよう努めるとともに、所有者がいないと推測されるもの、所有者から引取りを求められたもの又は所有者の発見できないものについてはその飼養を希望する者を募集し、当該希望する者に譲り渡すように努めるものとする。」
これで各自治体は殺処分をしないということが大前提となります。さらに「自治体の収容施設について、「各自治体において殺処分頭数をゼロに近付けることを目標に掲げ、同目標の達成に最大限尽力する。収容施設に対する国庫補助は原則として譲渡のために用いられることを前提とし、殺処分施設から譲渡施設への転換を図ること。」という付帯決議をつけたいと考えています。
また、これまで自治体は犬猫の引取りを求められた場合、拒否できないことになっていましたが、今回の改正で「引き取る相当の理由がない限り、拒否できる」というように変わりました。
~以下略~
岡山県動物愛護センター見学の日に、ボランティア側と行政側との質疑応答の中で、
「引き取り拒否はできないか」ということを要望してくれたボラさんがいましたが、
行政側は動物愛護法の35条を出して、法律で決められているから引取りせざるを得ない、と回答しました。
熊本市など行政職員の努力姿勢が凄まじい自治体はのぞいて、
全国どこのセンターでも、同じような考えと体制で漫然と引き取りを受容しているのではないでしょうか?
・行政による引き取りの現状 岡山県動物愛護センター見学記 (当ブログ)
http://animalhearts0.blog.fc2.com/blog-entry-33.html
今回の改正により、各自治体が定める条例などに、
引き取りできるのはどんな場合か、ということが明記されることになりました。
逆に言うと、そこに書いてある場合以外は、引き取りを拒否できることになります!
この「引き取りをできる事由」の内容を、どうやって決めるのかが気になるところですが、
よっぽどの理由がない限り引き取りはできないというように厳しく決めてもらわなくてはいけません。
全国のみなさん、この内容決定に関して、自治体に対してアンテナを張っていてください。
また、やむを得ない理由で引き取りした場合(どんな理由があるのか見当もつきませんが)、
新しい里親さんに譲渡するための努力義務規定が行政に対して設けられるということで、
これも具体的にどのような内容になるのか気になるところですが、今までより譲渡率が上がってほしいです。
国からセンターへの補助金の使い道も、殺処分のためではなく
譲渡活動のために充てなさい、ということで、動物愛護センターという名のとおり
真に動物を愛し護るための施設へ変化していくことが予想できる内容となりそうです。
・・・というように、この体質転換により、各自治体の殺処分率にどれだけ変化が出るのか期待大です。
今こそ市民県民が協力しあって動物行政を好転させるチャンスではないでしょうか?
市や県に対して条例案を進言したり、何をしたらいいかわからないという人は
地元の動物ボランティアに合流して譲渡事業を進めるべく盛り上げていきましょう。
【災害時の対応について】
-----------------------------------------------------------------------
◆災害時における動物の適正な飼育及び保管に関する施策を、
動物愛護管理推進計画に定める事項に追加する(第6条関係)
◆動物愛護推進員の活動として、災害時における動物の避難、
保護等に対する協力を追加する。(第38条関係)
-----------------------------------------------------------------------
【その他もろもろ】
-----------------------------------------------------------------------
◆法目的に、遺棄の防止、動物の健康及び安全の保持、動物との共生等を加える。
(第1条関係)
◆基本原則に、取り扱う動物に対する適正な給餌給水、飼育環境確保を加える。
(第2条関係)
◆所有者責務に、修正飼養や、適正な繁殖に係る努力義務を加える。
(第7条関係)
◆特定動物の飼養保管許可に当たって申請事項に
「特定動物の飼養が困難になった場合の対処法」を加える
(第26条関係)
◆動物愛護担当者職員及び動物愛護推進制度に関する国による必要な
情報の提供等を定めると共に、動物愛護に係る表彰制度を設ける
(第41条の3・第41条の4の2関係)
◆動物虐待を発見した場合の獣医師による通報努力義務規定を設ける。
(第41条の2関係)
◆マイクロチップの装着等の推進及びその装着を義務づける事に向けての
検討に関する規定を設ける(付則第14条関係)
-----------------------------------------------------------------------
【罰則等】 ≪これ重要!≫
-----------------------------------------------------------------------
◆酷使、疾病の放置等の虐待の具体事例を明記する(第44条関係)
◆動物の殺傷、虐待、無登録動物取扱、無許可特定動物飼養等について
罰則を強化する(第44条~第49条関係)
-----------------------------------------------------------------------
結局、全てのことが、ここに行き着くと思います。
不適切な生体販売も、飼養放棄も、行政への持ち込みも、多頭飼育崩壊も、虐待虐殺も、
全てこの罰則が確実で有効なものでなければ取締りができません。
私たちの社会が日常的に行ってきて悪しき文化となってしまった「犬猫を捨てる」ということは違法だし、
もちろん故意に傷つけることなど絶対にあってはならない重罪だということを
罰則強化とともに世間に周知しなければいけません。
周知するためには実際に取り締まって重罰を与えなければならない。
虐待の対象になりやすい子猫たちはいつも悲痛な叫びをあげています。
生き物を切り刻んで殺しておきながら軽犯罪並みの罰で、執行猶予つきで釈放など、許せません。
・川崎猫虐殺事件 (当ブログ)
http://animalhearts0.blog.fc2.com/blog-entry-25.html
・Dear.こげんた 福岡猫公開虐殺事件
http://www.kogenta.com/
また法案には虐待の具体的な例を明記するとあり、
積極的暴力・殺傷だけでなく、遺棄やネグレクトなども入ることが予想されます。
* * *
ということで、動愛法改正の暫定案について書きました。
私は今回の法改正について、
週齢規制、販売業者の終生飼養、動物愛護センターの変化、罰則の強化により、飼養放棄にまつわる問題が劇的に変化するのではと思っています。
簡単に飼えない、行政に引き取ってもらえない、捨てたら罰則、
ということになれば、簡単に遺棄することができなくなり終生飼養があたりまえという社会通念ができると思います。
それぞれの法案について、経過措置、猶予期間と言ってだらだらと実現が遠のく可能性もありますが、
近い将来、全てのカードがそろった時、今よりずっと良い日本に変わっているはずです。
動物は命あり傷つくもの。
そこに感情移入できないなら人間じゃないと思います。
犬猫などペットに関する惨状は少しずつ良い方向に向かっていますが、
今回の改正で保留となった週齢規制や、完全に闇に葬られた実験動物・畜産動物などなど、課題は山積みです。
引き続き市民レベルでの活動が必要なのは言うまでもありません。
それぞれの法案についての解釈は、自分レベルで勝手に書きましたので、
ひょっとしたら間違いがあるかもしれません。
来月、動物愛護法改正についての勉強会に参加する予定ですので、
そこで詳しく見聞きしてきて、間違い等あればその後に修正させていただきます。
『どこが変わった?動物愛護法』
http://peare.exblog.jp/18845211/
日時:2012年9月16日(日)13時~16時
場所:倉敷市立美術館講堂
講師:細川敦史(ほそかわあつし・弁護士)
入場無料、申し込み不要ですので興味のある方はぜひ!
まだ仮決定ということで、これから少数会派などに通して最終的な合意、決定案となるようです。
今期の国会では震災関連や消費税の案件が立て込んでいて、
動物愛護法の成立はもしかして見送られるのでは、と心配していましたが取り越し苦労だったようです。
国会の閉会までには成立の見込みというニュースを聞いたとき、
大変な国会の中で議員さんたち、動物のこともちゃんと動いてくれていたのだなあと、少し涙ぐんでしまいました。
(当たり前と言えば当たり前ですが・・・)
改正案の正式な全文はまだ発表されていませんので、各方面での記事の寄せ集めから、
気になるところを抜粋して私なりに解釈したものを書きます。
(※法案は、まだ決定ではありません)
【犬猫の販売業について特に規制強化されます】
第一種動物取扱業者のうち犬猫等販売業者について以下の事項を義務づける
-----------------------------------------------------------------------
◆幼齢個体の安全管理、販売が困難となった犬猫等の扱いに関する
犬猫等健康安全の策定及び尊守(第10条第3項、第22条の2関係)
◆飼養または保管する犬猫等の適正飼育のための獣医師等との連携の確保(第22条の3関係)
◆販売が困難となった犬猫等の終生飼育の確保(第22条の4関係)
◆犬猫等の繁殖業者による出生後56日を経過しない犬猫の販売の為の引き渡し
(販売業者等に対するものも含む)展示販売の禁止(第22条の5関係)
なお「56日」について、施行後3年は「45日」と、
その後別に法律で定める日までの間は、「49日間」と読み替える(付則第7条関係)
◆犬・猫等を販売する際の現物確認・対面説明の義務づけ(第21条の4関係)
-----------------------------------------------------------------------
ペットショップなどで売れ残った犬猫の末路は考えたくもないような残酷なものですが、
終生飼養の確保を義務付けられることにより譲渡活動が進められると共に、
そもそも売れ残らないように調整しないといけなくなります。
今まで、産めよ増やせよ売れ残ったら捨てよ、だった犬猫販売業界も、
終生飼養の確保と週齢規制のダブルパンチで少しは自粛してくれるでしょうか。
また、現物確認・対面販売の義務づけにより、ネット販売は実質不可能になると思われます。
ただし、いずれも経過措置が認められるとのことで、しばらくは現在の惨状が続くものとみられます。
・蓄犬業者(ブリーダ)の実態
http://www.geocities.jp/klcrfamily/real_breader.htm
・浅口市 売れ残り純血種を遺棄 (命の重さ さん)
http://animalexp0711.blog135.fc2.com/blog-entry-196.html
週齢規制について詳しく解説します。
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犬猫等の繁殖業者による出生後56日を経過しない犬猫の販売の為の引き渡し
(販売業者等に対するものも含む)展示販売の禁止
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これは私たちが求めていた8週齢規制についての改正案ですが、
結局どういうことになったかと言うと、
産まれた子が8週齢になるまではブリーダーが飼養する、ということになりました。
「親から引き離さないで」と訴えていた啓発バナーの通り、
ブリーダーから販売業者への引き渡しが8週齢になるまでは禁止となりました!
と、ここだけ読むとぬか喜びしてしまいそうですが、
付則としてややこしい文章がついています。
-----------------------------------------------------------------------
なお「56日」について、施行後3年は「45日」と、
その後別に法律で定める日までの間は、「49日間」と読み替える
-----------------------------------------------------------------------
読み替える、って何だかよくわからないですが、
あと3年間は猶予期間として「45日齢を過ぎたら販売業者に引き渡しできる」ということです。
つまり、現状と何も変わらない状態が少なくとも3年は続くことになります。
そしてその猶予期間の間に科学的に検証を進め、
猶予期間の3年が過ぎた時点でデータが揃っていれば、あるいは8週齢について社会通念として広まっていれば、
ようやく8週齢規制が実現することになります。
この科学的データ集めは、環境省にちゃんと予算がつきます。
でも3年経った時点で準備がととのっていない場合どうなるか?と言うと、
8週齢規制にはまだ早い、ということでさらなる猶予期間がつき
「49日齢を過ぎたら販売業者に引き渡しできる」と段階的に日齢を長くしていくようです。
2013年に施行された場合のイメージを図にしてみました。
(図の使用フリーです。必要あればどんどん使ってください。)

ということで結局、すぐには8週齢規制は入らないんですね。
本則に「56日」と書いてあるのは、一種のはぐらかしのように思えてしまいますが、
これだけ物議をかもした8週齢規制ですから、妥協点を模索した結果こうなったものと思われます。
業界への配慮と思われる猶予期間の3年が悔しいですが、
あえてポジティブに受けとると、
2段階目の猶予期間に突入する前に8週齢規制を早期実現する可能性が残されています。
最短で3年です。
ただしヘタすれば5年、最悪はそれ以上?とも読み取れる文章なので要注意です。
ですので、これから3年間で、環境省のデータ集めが滞りなく進むよう
協力や働きかけをすると共にアンテナを張って監視する、
そして世間へ8週齢の常識を広めていくための啓発もしていかなければなりません。
【悪質な多頭飼育の現場にメスが入りやすく】
-----------------------------------------------------------------------
◆騒音または悪臭の発生等、勧告・命令の対象となる生活環境上の支障の
内容を明確化する(第25条第1項関係)
◆多頭飼育に起因する虐待の恐れのある事態を、勧告、命令の対象に追加する。
◆多頭飼育者に対する届出制度について、条例に基づき講じる事ができる
施策として明記する(第9条関係)
◆狂犬病予防法、種の保存等違反を第一動物取扱業に係る登録拒否及び
登録取消、事由に追加する(第12条第1項関係)
-----------------------------------------------------------------------
悪質ブリーダーや一般個人の多頭飼育については、これまで特化した取り締まり基準がなかったため
各地域でひどい状態の現場が数々発見されてきました。
岡山でも、多頭飼育崩壊の現場がかなりの数あると聞いています。
・岡山市 犬多頭飼育崩壊 (森の小径 さん)
http://morinokomi.exblog.jp/15353271/
・浅口市 悪質犬販売業者 全焼事件 (犬の里親探しブログ さん)
http://kapirusu.blog116.fc2.com/blog-entry-64.html
上のほうで書いた、売れ残り純血種遺棄事件と同一人物です。
一度逮捕されても名前を変えて営業を続けてたそうです。結果これ。取締りが甘い。
・倉敷市 猫多頭飼育虐待 (かめちゃんの日記 さん)
http://peare.exblog.jp/17702246/
・井原市 猫多頭飼育虐待 (ちゃんた&ゆかいな仲間たち ~わんにゃん組~ さん)
http://chanta39.blog134.fc2.com/category3-1.html
今回の改正を受けて、多頭飼育の届出制度を自治体ごとにきちんと条例化し、
違反者には徹底した取り締まりをしてくれることを切に願います。
【アニマルシェルターが動物取扱業に入り、届け出が必要になります】
-----------------------------------------------------------------------
◆第二種動物取扱業の設立(第24条の2~第24条の4関係)
飼養施設を設置して、動物の譲渡等を業として行うもの
(省令で定める数以上の動物を飼養する場合に限る。以下「第二種動物取扱」という。)
に対し、飼養施設を設置する場所ごとに、取り扱う動物の種類及び数、
飼養施設の構造及び規模、管理方法等について、都道府県知事への届け出を義務づける。
-----------------------------------------------------------------------
これにより私が活動に参加しているシェルターも届出が必要になります。
届出書類の作成が大変そうですね・・・
・NPO法人 犬猫愛護会 わんぱーく
http://ww41.tiki.ne.jp/~wan89/
【行政による犬猫の引き取りが拒否できるように!?】(第35条関係)
≪これ重要!≫
-----------------------------------------------------------------------
◆都道府県等が、犬又は猫の引き取りをその所有者から求められた場合に
その引き取りをできる事由(動物取扱業者からの引き取りを求められた場合等)を明記する
◆引き取った犬又は、猫の返還及び譲渡に関する努力義務規定を設ける
-----------------------------------------------------------------------
これについては生方幸夫議員のブログより抜粋したものを読んでいただくほうが早いと思います。
以下、要点を抜粋させていただきました。
~中略~ 殺処分ゼロという文言は無理でしたが、原則、殺処分をしてはいけないという文言を入れることに成功しました。以下がその法律案です。
第4章 第35条4「都道府県知事等は第一項本文の規定により引取りを行った犬又は猫について、殺処分がなくなることを目指して、所有者がいると推測されるものについてはその所有者を発見し、当該所有者に返還するよう努めるとともに、所有者がいないと推測されるもの、所有者から引取りを求められたもの又は所有者の発見できないものについてはその飼養を希望する者を募集し、当該希望する者に譲り渡すように努めるものとする。」
これで各自治体は殺処分をしないということが大前提となります。さらに「自治体の収容施設について、「各自治体において殺処分頭数をゼロに近付けることを目標に掲げ、同目標の達成に最大限尽力する。収容施設に対する国庫補助は原則として譲渡のために用いられることを前提とし、殺処分施設から譲渡施設への転換を図ること。」という付帯決議をつけたいと考えています。
また、これまで自治体は犬猫の引取りを求められた場合、拒否できないことになっていましたが、今回の改正で「引き取る相当の理由がない限り、拒否できる」というように変わりました。
~以下略~
岡山県動物愛護センター見学の日に、ボランティア側と行政側との質疑応答の中で、
「引き取り拒否はできないか」ということを要望してくれたボラさんがいましたが、
行政側は動物愛護法の35条を出して、法律で決められているから引取りせざるを得ない、と回答しました。
熊本市など行政職員の努力姿勢が凄まじい自治体はのぞいて、
全国どこのセンターでも、同じような考えと体制で漫然と引き取りを受容しているのではないでしょうか?
・行政による引き取りの現状 岡山県動物愛護センター見学記 (当ブログ)
http://animalhearts0.blog.fc2.com/blog-entry-33.html
今回の改正により、各自治体が定める条例などに、
引き取りできるのはどんな場合か、ということが明記されることになりました。
逆に言うと、そこに書いてある場合以外は、引き取りを拒否できることになります!
この「引き取りをできる事由」の内容を、どうやって決めるのかが気になるところですが、
よっぽどの理由がない限り引き取りはできないというように厳しく決めてもらわなくてはいけません。
全国のみなさん、この内容決定に関して、自治体に対してアンテナを張っていてください。
また、やむを得ない理由で引き取りした場合(どんな理由があるのか見当もつきませんが)、
新しい里親さんに譲渡するための努力義務規定が行政に対して設けられるということで、
これも具体的にどのような内容になるのか気になるところですが、今までより譲渡率が上がってほしいです。
国からセンターへの補助金の使い道も、殺処分のためではなく
譲渡活動のために充てなさい、ということで、動物愛護センターという名のとおり
真に動物を愛し護るための施設へ変化していくことが予想できる内容となりそうです。
・・・というように、この体質転換により、各自治体の殺処分率にどれだけ変化が出るのか期待大です。
今こそ市民県民が協力しあって動物行政を好転させるチャンスではないでしょうか?
市や県に対して条例案を進言したり、何をしたらいいかわからないという人は
地元の動物ボランティアに合流して譲渡事業を進めるべく盛り上げていきましょう。
【災害時の対応について】
-----------------------------------------------------------------------
◆災害時における動物の適正な飼育及び保管に関する施策を、
動物愛護管理推進計画に定める事項に追加する(第6条関係)
◆動物愛護推進員の活動として、災害時における動物の避難、
保護等に対する協力を追加する。(第38条関係)
-----------------------------------------------------------------------
【その他もろもろ】
-----------------------------------------------------------------------
◆法目的に、遺棄の防止、動物の健康及び安全の保持、動物との共生等を加える。
(第1条関係)
◆基本原則に、取り扱う動物に対する適正な給餌給水、飼育環境確保を加える。
(第2条関係)
◆所有者責務に、修正飼養や、適正な繁殖に係る努力義務を加える。
(第7条関係)
◆特定動物の飼養保管許可に当たって申請事項に
「特定動物の飼養が困難になった場合の対処法」を加える
(第26条関係)
◆動物愛護担当者職員及び動物愛護推進制度に関する国による必要な
情報の提供等を定めると共に、動物愛護に係る表彰制度を設ける
(第41条の3・第41条の4の2関係)
◆動物虐待を発見した場合の獣医師による通報努力義務規定を設ける。
(第41条の2関係)
◆マイクロチップの装着等の推進及びその装着を義務づける事に向けての
検討に関する規定を設ける(付則第14条関係)
-----------------------------------------------------------------------
【罰則等】 ≪これ重要!≫
-----------------------------------------------------------------------
◆酷使、疾病の放置等の虐待の具体事例を明記する(第44条関係)
◆動物の殺傷、虐待、無登録動物取扱、無許可特定動物飼養等について
罰則を強化する(第44条~第49条関係)
-----------------------------------------------------------------------
結局、全てのことが、ここに行き着くと思います。
不適切な生体販売も、飼養放棄も、行政への持ち込みも、多頭飼育崩壊も、虐待虐殺も、
全てこの罰則が確実で有効なものでなければ取締りができません。
私たちの社会が日常的に行ってきて悪しき文化となってしまった「犬猫を捨てる」ということは違法だし、
もちろん故意に傷つけることなど絶対にあってはならない重罪だということを
罰則強化とともに世間に周知しなければいけません。
周知するためには実際に取り締まって重罰を与えなければならない。
虐待の対象になりやすい子猫たちはいつも悲痛な叫びをあげています。
生き物を切り刻んで殺しておきながら軽犯罪並みの罰で、執行猶予つきで釈放など、許せません。
・川崎猫虐殺事件 (当ブログ)
http://animalhearts0.blog.fc2.com/blog-entry-25.html
・Dear.こげんた 福岡猫公開虐殺事件
http://www.kogenta.com/
また法案には虐待の具体的な例を明記するとあり、
積極的暴力・殺傷だけでなく、遺棄やネグレクトなども入ることが予想されます。
* * *
ということで、動愛法改正の暫定案について書きました。
私は今回の法改正について、
週齢規制、販売業者の終生飼養、動物愛護センターの変化、罰則の強化により、飼養放棄にまつわる問題が劇的に変化するのではと思っています。
簡単に飼えない、行政に引き取ってもらえない、捨てたら罰則、
ということになれば、簡単に遺棄することができなくなり終生飼養があたりまえという社会通念ができると思います。
それぞれの法案について、経過措置、猶予期間と言ってだらだらと実現が遠のく可能性もありますが、
近い将来、全てのカードがそろった時、今よりずっと良い日本に変わっているはずです。
動物は命あり傷つくもの。
そこに感情移入できないなら人間じゃないと思います。
犬猫などペットに関する惨状は少しずつ良い方向に向かっていますが、
今回の改正で保留となった週齢規制や、完全に闇に葬られた実験動物・畜産動物などなど、課題は山積みです。
引き続き市民レベルでの活動が必要なのは言うまでもありません。
それぞれの法案についての解釈は、自分レベルで勝手に書きましたので、
ひょっとしたら間違いがあるかもしれません。
来月、動物愛護法改正についての勉強会に参加する予定ですので、
そこで詳しく見聞きしてきて、間違い等あればその後に修正させていただきます。
『どこが変わった?動物愛護法』
http://peare.exblog.jp/18845211/
日時:2012年9月16日(日)13時~16時
場所:倉敷市立美術館講堂
講師:細川敦史(ほそかわあつし・弁護士)
入場無料、申し込み不要ですので興味のある方はぜひ!
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