第1部・動物愛護法交流集会@大阪(THEペット法塾主催 2012年11月18日)

2012.11.21 12:32|動物愛護法
11月18日、大阪の勉強会に行ってきました。
ペット法塾さん主催の、改正動物愛護法の交流集会です。

* * *

「動物の命を原点に改正動物愛護法に命を吹き込む」
- これからの取組の組織と活動 -



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車の運転が好きな私、岡山から3時間ほど走るとあっという間に大阪に着きます。
好きな音楽を聴きながら車を走らせていると気分転換にもなって良い一人旅。

勉強会は4時間という長丁場、気合い入れていこ~!と受付を済ませて会場に入りました。

その受付の方、
会場に入って座った席の右隣の方、
さらに左隣の方・・・
この日は数奇なめぐり合わせが重なり、不思議体験をさせていただきました。

受付の方はツイッターでいつも励ましの言葉をくださる方。
右隣は岡山のボランティア仲間。
左隣は京都ベジタリアンパーティーでご一緒した方。

申し合わせたわけでもないのに、
たぐり寄せたかのように縁のある方とめぐり逢うことができたこの日

勉強会の内容も、集中力を保っていないとついて行くことすら
ままならないほどの盛りだくさんな内容でした。

膨大ですので印象に残った部分を私の解釈で抜粋して書きます。


<参考記事>

◆ 改正概要について
→ 動物愛護法改正案が発表されました

◆ 改正法 全文

→ 動物愛護法改正2012 全文


◆ 附帯決議 全文

→ 11個の魔法 「附帯決議」





* * *

【第1部】 改正動物愛護法の解説


第1部は改正動物愛護法について、
弁護士の皆さんがそれぞれパートを担当して解説してくださいました。



◆動物愛護法の改正(2012)重要ポイント

帯広畜産大学理事・副学長で弁護士 吉田眞澄先生。

改正法の重要ポイントとして解説してくださった中で印象的だったのが、
「パブリックコメントからはっきりと傾向が読み取れるにも関わらず、
理由を明確に示さないまま法改正に取り入れられなかった事項がある」
ということでした。

先生が用意してくださった資料を見れば一目瞭然、それは「闘犬」「実験動物」「産業動物」の3点です。
パブコメで規制強化の声が圧倒的に多かったにも関わらず、今回の法改正でほとんど何もテコ入れされなかった分野。



◆動物愛護法の精神(目的・基本原則)
THE ペット法塾 代表の植田勝博先生。

注目すべき改正点は、”動物基本法”としてのあるべき姿に近づくべく、重要な項目が盛り込まれたこと。
「動物が命あるもの」という当たり前のことをより一層理解すべく、
終生飼養義務、給仕給水などの動物福祉に関する項目が多く盛り込まれました。
また、殺す行政から生かす行政への転換、そのための重要な「付帯決議」について。
そして愛護法の対象となる動物の拡大(被災動物、野良猫など)、責任を追う者の拡大(獣医師、動物愛護推進員など)。
動物愛護のための積極的な取り組みや指針を示す内容に。



◆被災動物、雑則

ひきつづき植田勝博先生。

改正の趣旨は被災動物の保護。殺処分をしない方向。
今回の改正で災害時の動物保護のための項目が盛り込まれたことは、阪神大震災の時とくらべて大きな進歩。
東北震災においての問題を受けて進化した部分もあるが、問題も山積み状態で、システム整備が求められる。



◆飼い主の責任
ひきつづき植田勝博先生。

虐待や遺棄の規制、終生飼養義務、不妊手術の奨励。
ネグレクトや捨てる行為はいけませんよ、
適切な給仕給水などの動物福祉環境の保全を図る義務がありますよ、
動物の命に最後まで責任を持つこと、そのためには不妊手術が必要でしょ、
という当たり前のことが、もっと当たり前に意識・実行されるべく改めて文章として盛り込まれました。
そのための罰則強化も。



◆付帯決議
ひきつづき植田勝博先生。

あらためて付帯決議の内容の重要さを考えさせられました。
11個ある付帯決議の、その一つ一つが、どれも欠けてはならないピースのような気がします。
植田先生がおっしゃるように、法律の本案のほうにこそ入っていませんが、
付帯決議は法律を作ったものの意思であり、法律を補完する重要な役割を果たしているものです。
だから絶対に軽んじてはならないんだということを、
この法律を運用する行政の方はもちろん、一般の私たちも肝に銘じておかなければいけないと思いました。



◆罰則・動物犯罪
弁護士 渋谷寛先生。

強化された罰則について重点的な解説でした。
やはり罰則の強化は動物愛護の実現に向けては必須項目で、
私たち一般人にとってもわかりやすく感情移入しやすい項目です。

改正のポイントとしては、罰則は軒並み引き上げられたということ、
それでも器物損壊罪と比較すると懲役は短いこと、違反者に対し飼育禁止や所有権を奪うという罰則が実現しなかったこと。

また虐待について、積極的虐待(暴力・殺傷)は具体的な説明がないのに比べて、
ネグレクトについては判断基準がもっとわかりにくい事からから、
どういう場合がネグレクトなのかちゃんと具体内容が書かれています。
これに良い影響を受けて積極的虐待についても今後具体内容を明記して
罰則徹底の方向に向かうことが期待されるかもしれません。



◆改正動愛法の解説と問題点の点検
弁護士 細川敦史先生。

行政による犬猫の引き取り(いわゆる35条問題)と、ペット葬儀業者について重点的にお話。
販売業者からの引き取り要求は拒否できるように。
一般からの引き取りは
「終生飼養の趣旨から引き取りを求める相当の事由がないと認められる場合として環境省令で定める場合」
には、行政は引き取り拒否することができます
つまりよっぽどのことがない限り、保健所や愛護センターに連れて行っても
引き取ってもらえなくなる・・・はずですが・・・。

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犬猫を他人に殺してもらうのにどんな正当な理由がありますか?

行政が引き取り拒否できる事由について、マニュアル(省令)が作られようとしています。
行政も引き取りたくはない、拒否したいんです。
身勝手な飼い主を拒否できる理由、これだけで十分だと思いますか?

皆さんも意見を提出してください!12月12日まで!
→ 行政による犬猫引き取りのパブリックコメントについてはこちら
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また迷子や、その他引き取った犬猫については、行政も殺処分ではなく
所有者への返還や希望者への譲渡に努める義務が課せられるように。

これらに関する付帯決議では、
飼い主放棄の子についても譲渡対象とすること(これ重要!)や、
地域猫対策については官民挙げての推進を図るべきと書かれています。

あと重要なのは、「駆除目的での猫捕獲は認めない」という意向です。
立法者の意思である付帯決議で野良猫の生存の権利を認めていることは重要なポイントだと思います。

改正の問題点として細川先生が指摘されるのは、
・「引き取らなければならない」の文言が消えなかったこと。
・「その他の者」からの引き取り要求を想定していること。「その他」というあいまいな文言で例外を作り煙に巻く可能性?
でも駆除目的での捕獲者からの引き取りはできないと付帯決議で明記されていることを武器に、私たちも運用していきたいですね。



◆動物取扱業(犬猫販売業)について
弁護士 片岡利雄先生。

消費者に対する説明義務の強化。
売れば終わりではなく、客に対して、犬猫の健康状態や繁殖者の詳細情報、遺棄などに対する罰則も含め説明する義務。
また犬猫の健康安全計画を作ることが義務になると共に、販売困難な個体についても終生飼養義務が課せられる。
幼齢の犬猫については56日未満の販売禁止(週齢規制の経過措置についてはこちらの記事中で解説しています

これらに関する付帯決議では、行政による業者への立ち入り検査を積極的に行うこと、また
「行政処分並びに刑事告発も適切に行うこと」と書かれています。
刑事告発という穏やかでない文言が入ったことを頼もしく思います。

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犬猫販売業の適正化はもっとも大きな課題。
世の中には良いブリーダーさんより、悪質な繁殖と安易な販売のほうが多いのが現実。
ニーズ以上に産み出されては処分される、ペットたちの不幸は止まりません。

皆さんも意見を提出してください!12月12日まで!
→ 犬猫販売業のパブリックコメントについてはこちら
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◆マイクロチップ

弁護士 伊藤志津子先生。

マイクロチップは法律本文に入りませんでしたが、附則と付帯決議に盛り込まれています。
犬猫の管理と安全のためのトレーサビリティーの確保にはマイクロチップが有効。
今後5年を目途にマイクロチップ普及に関しては大きく前進すると思われます。


◆環境・特定動物
弁護士 加藤高志先生。

環境というのは市民の生活レベルの生活環境のこと。
多頭飼育による周辺環境への影響から推測される虐待についてのお話です。

従来の法律では記載のなかった虐待の前段階について明記。
つまり虐待を受けてからでは遅いということで動物が虐待を受ける「おそれ」がある段階でも措置がとられるように。
法律本文に多頭飼育によって動物虐待(主にネグレクトなど)が起こる「おそれ」があると明確に記載されたのは進歩。
その具体的内容(何がどうなっていたら「おそれ」があると判断して警察や行政が動くか)については環境省令で今後決められます。

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虐待までいったら遅い!悲惨な多頭飼育の現場。
虐待の「おそれ」を周りが気づいたとき、
行政や警察が動けるようになるマニュアル(省令)が整備されつつあります。

皆さんも意見を提出してください!12月12日まで!
→ 多頭飼育のパブリックコメントについてはこちら
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また特定動物(クマなど)について、改正のポイントは
飼養を始めるときに提出する書類に記載する項目に「飼養が困難になった場合における措置」が入ったこと。

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特定動物については、クマ牧場の事件を受けて改正が後押しされました。
飼養者の責任、残されたクマ達の行き場・・・
見世物のような扱いの動物たちの福祉はどこに?
あらためて考えるべき時です。

皆さんも意見を提出してください!12月12日まで!
→ 特定動物のパブリックコメントについてはこちら
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◆産業動物の愛護
弁護士 日高信哉先生。

産業動物の被災時の保護について、附帯決議に明記されました。
ポイントは、そこには「被災時においても」と書かれていることで、
つまりそれは平常時においてはもちろんでしょ、ということを暗に示唆していること。
日高先生は幼少期の鶏屠殺を目の当たりにされた経験について体験談を話してくださり、
資料にはこのように書かれていました。

とても、重要だと思ったので転載します。


命を奪われることを前提に飼養される産業動物は、動物愛護法による保護から最も遠い存在と言わざるを得ない。

一般的に、消費者は、産業動物がどのような状況下で飼養され、どのような方法で食肉等になるかについて知ることはほとんどない。消費者の興味の対象はもっぱら小売り価格の変動についてである。

他方で、生産者においても、そのような消費者に対応するため、産業動物についての福祉を向上させた場合のコストの上昇を抑制することを優先することになる。

我々は、他の動物の命を奪って生きているが、食卓に並ぶ食肉を見ても、その実感は希薄である。
むしろ、命を奪っている現状を明らかにすることがタブーにされているような風潮すらある。

「人と動物の共生」を考えるにあたり、人間が動物の命を奪って生きていることに目を背けることがあってはならない。



* * *

ここまでが第1部の内容でした。

第2部に続きます。






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テーマ:動物保護
ジャンル:福祉・ボランティア

コメント:

6月25日「ペット法塾のイベント」拡散お願い

こんにちは 公式のHPよりも 素晴らしい紹介ですね。私は同じ「THEペット法塾」の

6月25日に開かれる 動 物 愛 護 法 改 正 交 流 会の応援拡散をしている者です。

是非 ご一緒に拡散しませんか?近々「チラシ」も出来上がります。

詳しくは「THEペット法塾」HPを見て下さい。よろしく お願い致します。

http://thepetlaw.web.fc2.com/

Re: 6月25日「ペット法塾のイベント」拡散お願い

北山さん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

6月のは、衆議院会館で開催の実験動物についての交流会ですね。
私もぜひ交流会に参加したいのですが、東京は遠いので容易には行けそうにありません。
拡散のお手伝い、できる範囲でさせていただきたいと思います。
よろしくお願いいたします!
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にゃんとら

Author:にゃんとら
岡山の猫好き。
犬猫を愛護センターや保健所からレスキューするNPO法人の動物愛護ボランティアに参加。シェルターに犬猫のお世話に行きながら、個人ボランティアとしても情報発信しています。
本職はグラフィックデザイナ~。

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