命を看取るということ

2012.07.22 01:27|ボランティア活動
実際どう書いていいものか、わからないまま、「あの日」から何週間も過ぎてしまいました。

その間にも、動物福祉活動を続けていく中で、書きたいこと、訴えたいこと、いろいろな事に出会いましたが、私の中ではあの子のことを書かずして他の記事を書いたり、またがんばろうと前向きに考えることはできませんでした。

このままでは、次へは進めない・・・
そういう気持ちがいまだ強く残っていることに、ここ数日であらためて気づきました。
だから、迷いましたが書くことにしました。
今日は、私の今後の決意もこめて、皆さんにご報告しようと思います。


6月28日、午後11時すぎ、カプチーノ猫のヒーローが虹の橋へ旅立ちました。



1才と1ヵ月でした。

DSC_0002.jpg


ヒーローは飼い主に飼育放棄された後、動物愛護センターに収容され、
殺処分寸前だったところをシェルターに引き取った子です。
人なつこい性格と、独特のひょうきんさで、スタッフみんなに可愛がられていました。
大切に大切に、育ててきました。


そして私にとっては特別な猫でした。

→ 「純粋にただ、生きている。~カプチーノ猫のヒーロー~」


* * *


6月のはじめ、ヒーローは急に体調を崩しました。

病名は、「 伝染性腹膜炎 (FIP) 」

白血病の発症ばかりを心配していた私の耳に飛び込んできたのは、そんな聞き馴染みのない病名でした。
よかった。白血病じゃなかった。
一瞬、胸をなでおろしました。

でもそれが間違いだったと気づかされるのに、そう時間はかかりませんでした。

この病名をご存知の方ならおわかりになると思うのですが、
それは、聞いた瞬間凍りついてしまってもいいほどの、恐ろしい病気だったのです。

獣医師が軒並み、さじを投げるほどの最凶の相手。
それがヒーローの相手でした。

ヒーローはFIPのウェットタイプと呼ばれる症状で、
体調を崩した時にはすでに胸水がいっぱいに溜まり、生死の境をさまよっていました。
シェルタースタッフの連携と病院での処置により一命は取り留めたものの、
FIPという病名から想像される残りの時間は、そんなに長くはないと、私たちは覚悟せざるを得ませんでした。


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ヒーローをシェルターに迎え入れた昨年12月末から、私には、ずっと悩んでいたことがありました。
それは、彼を家族として我が家に迎え入れること。

でもヒーローは白血病で、うちには先住猫が2匹いました。
感染を防ぐ飼い方について悩んでいるうちに、あっと言う間に月日は流れていきました。
その間シェルターで元気に遊ぶ姿や、ボランティアの皆さんが可愛がってくれているのを見るうちに、
なんとなく決定を先延ばしにしていました。

気がついたら、ヒーローは死に至る病気になっていました。

私は5ヵ月間、何をしてた?

そんな事態になってようやく目が覚めた私は、突き動かされるようにヒーローを自宅に連れ帰りました。
でも、5ヵ月ごしにやっと自宅に迎え入れたヒーローは、
残念ながらもう、以前の元気なヒーローではありませんでした。


せめて、彼の最期を看取ってやるために、私はベストを尽くそう。
そんな思いから、ヒーローと私の、長くて短い、1ヵ月の闘病生活が始まったのでした。



当初私はこの事態を、意外と冷静に受け止めていました。
どうすれば良い最期にしてやれるか、
どうすれば私自信の後悔が少ないか。

今から思えば、あの時私は、すべてをきれいに終わらせる事ばかり考えていたんです。
でも現実はそんなに甘くはなくて、どんな終わりであっても後悔は付きまとうし、
良い最期なんていう形のないものを追いかけて、
結果的には自分で自分の首を絞めていっていたのでした。

だってヒーローと私の闘病生活は、その時思っていたものより、はるかに陰鬱なものだったし、
その最期は、私が納得できるものではなかったからです。


命を看取るということが、
これほどまでに重いものだとは、その時の私にはわかっていませんでした。




DSC_0004.jpg


* * *

今の複雑な気持ちをこれ以上言葉にする前に、まず、
1ヵ月の闘病生活の間に起こったこと、感じたことを書いておきたいので、看護日記を公開することにしました。

この日記は、本当に書いておいて良かったと思います。
疲労困憊の看護生活の中で淡々と書いている文章ですが、今読むと、
死を乗り越えるためのヒントがたくさん散らばっている気がします。

特にボランティア仲間の支えは本当に心あたたまるもので、それがなくては、
私は途中で挫折していたと思います。


日記を載せる目的は、私自身が次へ進むため、気持ちを整理するため、
というのはもちろんなのですが、もう一つ大きな目的があります。

それは、「伝染性腹膜炎(FIP)」という難解な病気に関する情報を、
どんなに無駄だと思うような小さな情報でも、発信したいという思いです。


私がこの病気に初めて向き合ったとき、獣医師も見放す難しい病気だということしかわからず、
なぜこんなにも情報がないのかと愕然としたのです。
そして、ただ致死率の高い難しい病気だということだけが書いてあるサイトが多い中で、
同じ境遇を体験した飼い主さんの闘病ブログは、私にとっては遠くから射す一筋の希望の光のようでした。

そこには獣医師がすでにあきらめた試行錯誤があり、小さなデータの積み重ねがあり、
猫を思う必死の努力の姿がありました。
そういうブログを読んで、ずいぶん励まされたと同時に、死に対する心構えのようなものもできていったのです。

だから、今も苦しんでいる飼い主さんや猫のために、今度は私が何か発信できればと思いました。
FIPという病気にかかったばかりに亡くなってしまったヒーローですが、
そんな希少な病気にかかったからこそ、その死を無駄にしない方法があります。


私の看護日記なんて、ぜんぜんデータとか細かなことは書いてないんですが、何か少しでも、
皆さんがパートナーと向き合う時のヒントになればと思います。

* * *

→ 看護日記(1) 『 不安の1週間 』
「生かすための看護ではなく、看取るための看護って、こんなにむなしいものなんだ」





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テーマ:動物保護
ジャンル:福祉・ボランティア

コメント:

FIP

我が家の子も昨年、FIPで亡くしました。保護して2月、1月の闘病の末亡くなりました。推定3歳。
FIPの名前は知ってましたが、こんなに早く彼がいなくなるなんて思いませんでした。
あれから1年、彼の事を忘れた日はありません。

>じゃいこさん

FIPはやはり最凶の相手ですね。

エイズ(FIV)、白血病(Felv)とならんで、伝染性腹膜炎(FIP)は本当に重篤な病気です。
どの病気が一番、ということは言えませんが、
ウイルス性の病気の中で、望みの薄さでいえば、FIPがダントツのような気がします・・・

私もまさに、こんなに早く彼がいなくなるとは、思っていませんでした。
1年たっても何年たっても、忘れられなくて当然ですよね(>_<)

虹の橋で元気に走り回ってくれていると信じるしかありません。

幸せな猫

FIV, FIP, FeLV。。うちのシェルターでは生き残れません。 わかったうえですぐに処分です。でも、ヒーローはにゃんとらさんや、他の方のおかげで、最後まで看取ってもらえた。 なんて幸せな猫でしょう。 たった1年とおもうかもしれませんが、ヒーローにとっては、この1年の中で、にゃんとらさんとすごした何週間、ほんとに幸せだったとおもいます。

どれだけ一緒にいたかっていう時間ではないのです。 Quarity Of Lifeです。 どれだけ、充実した時間を過ごせたかです。 

いつの日か、ヒーローは違う形として、にゃんとらさんの前に現れますよ。 そのときはどうか、おおきなこころで、受け止めてあげてください。

ヒーローのご冥福お祈りさしあげます。。

>Gumiさん

こんにちは。

ほんと・・・どんな形であれ、もう一度現れてほしいです。

その時、もし言葉が通じたなら、猫としての一生ってどんなかんじか、
ヒーローは死ぬときにどんな気持ちだったか、
聞いてみたいなーと思います。

みなさんが、ヒーローは幸せだったと言ってくれて
気持ちがすこし軽くなります。

ありがとうございます。

拝見させて頂きました。

記事の方、読ませていただきました。
昨日の昼過ぎに生後5ヶ月♂が
ほぼ間違いなくFIPだと診断され
小さい体に腹水が溜まっております。
インターフェロンの注射と
ステロイド、抗生物質、少し貧血ぎみだと言うことでサプリメントを服用しています。
今は気持ちも大分落ち着き
冷静に対応出来るようになりましたが
直後は涙ばかり溢れ
心配させないようにと笑えば笑うほど
泣けました。
でも食欲はあるみたいで
ウエットフードをがっつく姿を見てるとまだ生きてるって実感しました。
私は勝手に最後のことばかり
考えていたかもしれません。
まだまだしたいことがたくさんある
ヤンチャな年頃なので
また前みたいに走れる姿を見れるよう願い、猫ちゃんと共に
生きたいと思います。

Re: 拝見させて頂きました。

まなぼーさん。
心中お察しします・・・。
生後5か月の子猫ちゃんなんですね。
想像しただけで泣けてきます。
インターフェロンを投与されているとのことで、上手くいっていれば今頃は
少し元気になって希望も見えてきた頃でしょうか。

食欲があるのが救いですね。
私はヒーローに強制給餌してしまったことを後悔しています。
看護する中でのひとつひとつの判断・・・今でも、何が正解だったのかわかりません。
猫の嫌がることはしなければ良かったと思う反面、
回復の可能性を考えるとせずにはいられなかったんでしょう。

とにかくどんな事でも、猫のために真剣に考えてすることは正解も間違いもないと思います。
通院疲れ、落ち込み、全てが降りかかってきて、
猫ちゃんだけでなく飼い主さんもすごく大変だと思いますが、
どうかどうか、がんばってください。
回復のご報告を心からお待ちしています。
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にゃんとら

Author:にゃんとら
岡山の猫好き。
犬猫を愛護センターや保健所からレスキューするNPO法人の動物愛護ボランティアに参加。シェルターに犬猫のお世話に行きながら、個人ボランティアとしても情報発信しています。
本職はグラフィックデザイナ~。

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